Neo-Porte所属の水無瀬が、2026年3月6日に弦月藤士郎との『月光』歌ってみた動画を公開した。タイトルは「月光 歌ってみた【 水無瀬 / 弦月藤士郎 】」。概要欄では、原曲をキタニタツヤとはるまきごはんが手がけ、Movieは真山琳、illustは蚕、水無瀬はVocalに加えてMixとMasterも担当したと案内されている。コラボ歌ってみたとしては珍しく、歌い手の片方が音の最終調整まで握っている点も見どころだ。
今回のカバーは、最初から強く押し切るというより、2人の声の距離を少しずつ縮めていく作りが気持ちいい。水無瀬の低音が曲の土台を落ち着かせ、その上に弦月藤士郎のしなやかな抜けが重なることで、原曲の夜っぽい温度がきれいに残っていた。
静かな曲調を崩さず、2人の声を順番に差し出していく
まず印象に残るのは、2人の声をぶつけるのではなく、曲の中で自然に受け渡していくところだ。Aメロでは言葉を置く間が広めに取られていて、どちらかが感情を大きく押し出しすぎない。そのおかげで、『月光』がもともと持っている静けさや陰りが、カバーでもちゃんと生きている。
サビに入ってからも、声量だけで押し切る感じにはならない。水無瀬が下から支え、弦月藤士郎が上で空気をひらくように乗るので、盛り上がりどころでも輪郭がぼやけにくい。コラボらしい高揚感はあるのに、聴き心地は最後まで落ち着いているのがいい。互いの声を競わせる構図ではなく、曲の静かな緊張を保つために役割が分かれているように聞こえる。
水無瀬がMixとMasterも担うことで、声の距離感が揃う
概要欄にある通り、水無瀬はVocalだけでなくMixとMasterも担当している。2人の声の近づけ方が妙にしっくりくるのは、その役割の広さも大きそうだ。ユニゾンを厚くしすぎず、ソロでは乾かしすぎず、曲に必要な暗さと透明感のちょうど間を狙っているように聴こえる。
映像も派手な演出で押すというより、歌の余白を邪魔しない方向にまとまっている。画面が忙しすぎないぶん、声が入れ替わる瞬間やハモリの伸びに意識が向きやすい。歌ってみたとしての見せ方が前に出すぎず、曲そのものの空気を支えているのが好印象だった。映像が引き算寄りだからこそ、2人の声の重なり方の差がよく分かる。
派手さより相性の良さが残る、静かなコラボ歌ってみた
コラボ歌ってみたは、組み合わせの意外性や派手さが先に立つことも多いが、今回の『月光』は聴き終えたあとにじわっと相性の良さが残るタイプだ。水無瀬の声の重みと弦月藤士郎のやわらかな抜けが、どちらか一方だけでは出しにくい温度を作っている。
原曲の熱を大げさに上乗せせず、2人の声で静かな張りつめ方を作ってみせたのが、このカバーのいちばん面白いところだと思う。水無瀬か弦月藤士郎のどちらかの歌をよく聴く人はもちろん、組み合わせの妙を味わいたい人にも手に取りやすい一本だった。聴き終えたあとに「誰がどこを担当していたか」が自然に残る、配役の気持ちいいコラボだった。
