FIRST STAGE PRODUCTION の爽田こすもが2024年12月6日に公開した『異星にいこうね』歌ってみたは、再生してすぐに曲の温度へ入っていける一本だ。概要欄では、原曲をいよわ feat. 星界、Mix を成宮亮、Vocal / Illust を爽田こすも本人が担当したと案内されている。短い動画だが、声と絵の空気が最初から揃っていて、一本の小さな作品としてまとまりがいい。
原曲の浮遊感が強い曲だけに、歌い手の色を出しすぎると輪郭が変わりやすいが、このカバーはその距離の取り方がとても自然だ。透明感のある声を前に出しつつも、曲が持つやさしい不思議さを崩さず、3分弱の尺に静かな余韻が残る。
言葉を押し込みすぎないから、浮遊感が残る
この歌ってみたでまず耳に残るのは、感情を大きく乗せすぎず、言葉をすっと浮かせるように運んでいくところだ。高い音域でも輪郭が尖りすぎないので、原曲の持つ不思議な軽さがきれいに残る。フレーズを強く締めにいかないぶん、メロディが空中に少し滞在する感じがあって、この曲らしい夢の中のような感触がよく出ていた。
さらっと聴けるのに、声が薄く流れてしまわないのも良かった。息の混ぜ方がやわらかく、でも語尾の芯は消えないので、静かな曲調の中でも歌の輪郭はきちんと残る。夜に小さめの音で流しても雰囲気が崩れず、最後まで同じ温度で浸っていられるタイプの歌ってみただ。
本人イラストだから、声と画面の気配が揃う
概要欄によると、歌だけでなくイラストも爽田こすも本人が担当している。ここがこの動画の大きな強みで、音と画を別々に主張させるのではなく、最初から同じ温度の中に置けている。短い動画でも世界観がすっとまとまるのは、この一体感が大きい。
イラストはやわらかく、歌声もやさしく輪郭を残す方向だから、どちらか一方だけが前に出る感じがない。派手なアニメーションや強い色味で押すのではなく、静かな見せ方で曲の空気を支えているので、歌そのものへ自然に集中できる。原曲へのリスペクトを保ちながら、自分の色も静かに混ぜた作り方がきれいだった。
Mix が過剰に磨きすぎず、声のやわらかさを残している
Mix は成宮亮が担当しているが、全体の印象は過剰に加工されたきらびやかさではなく、声のやわらかさをそのまま整えて前へ出した形に近い。リバーブ感で広げすぎず、でも平たくもしないので、浮遊感のある曲に必要な奥行きがちゃんと残る。
このくらいの温度の曲は、声を飾りすぎると良さが消えやすいが、このカバーはその危うさをうまく避けている。音の整理はされているのに、生っぽい息遣いまでは消えていないので、静かな楽曲としての魅力がちゃんと残っていた。
短いのに、爽田こすもの空気がきちんと残る
約2分47秒と短めなので、初めて爽田こすもの歌動画を聴く人でも構えずに再生しやすい。それでいて、声の透明感、表現の距離感、イラスト込みの見せ方まできちんと伝わるから、入口用の一本としても収まりがいい。
原曲が好きで聴き比べたい人にも、爽田こすもの歌声から入りたい人にも向いている。聴き終えたあとにもう一度最初から流したくなるのは、強い見せ場で掴むからではなく、声と画面の気配が最後までぶれないからだと思う。小さな作品としての完成度が高い歌ってみただった。
